空圧制御技術で人型ロボットの開発
超小型・空圧デジタルサーボ弁の応用 特許登録
人型災害ロボットの開発
2021.03.02 更新
人型災害ロボットに応用可能な空圧制御技術の開発を続けて約30年が経過し、ようやくその実現を証明できるところまで来ました。
なぜ人型なのか : 二足歩行は、狭い場所や起伏のある場所、階段や複雑な地形を乗り越えて前進・後退が可能です。そして、人間の腕と手の働きは一般的な機械装置が持つ能力を遙かに越えています。災害現場は常に想定外の連続であり、あらゆる状況に対応できる機械装置が要求され、それがすなわち人型ロボットなのです。しかも、人間と同等のスペース・大きさである必要があります。
更に重要な事は、人間並みの腕の力や握力、指の力が要求されることです。
このことが、ロボットの設計を非常に難しくしています。50年以上の歳月を費やしても、まだ実用的な人型災害ロボットは実現していないからです。本ホームページはその本質的問題に言及し、新しい方法を提案しています。
なぜ空圧なのか : 現在は電気によるサーボ技術がロボット開発の主流です。油圧サーボ技術もすでに確立した技術で人型ロボットに応用されています。電気も油圧も足と腕に関しては様々なものが開発されていますが、手に関しては限られたスペースに納めようとすると、非常に難しいと思います。
唯一の可能性は空気圧制御であると約30年前に思いが至り、空気圧を用いて簡単に制御できるサーボ技術の開発に取り組み始めました。
空圧デジタルサーボ弁の開発: そして、約10年前に超小型の空圧デジタルサーボ弁の原型を開発しました。現在は特許登録になっており、海外数カ国にも申請中です。このパルス駆動のサーボ弁を用いることで、専用のドライバー回路や増幅回路を全く必要とせず、シーケンサーの出力だけで駆動が可能になりました。
超小型化により、動画に示す右腕の中に18個の空圧サーボ弁を埋め込むことが可能になったのです。全身を製作したとき、すべてのサーボ弁を体内に埋め込むことができます。
まだまだ、この技術は進化させられると確信しています。
人型災害ロボットの開発に向けて: 解決すべき課題は、数多くあります。空気圧駆動の弱点を克服しながら、実用的な災害ロボットの実現を目指していきます。その途上において、空圧デジタルサーボ弁の応用範囲は更に広がっていくと考えています。
三つの制御形態とその特徴
① 電気のサーボモータ制御
○ 利点-制御が容易。制御技術が最も進化している分野。機器や部品も非常に豊富に存在する。
● 欠点-アクチュエータ単位体積当たりのパワーが無い。減速機が必要。直線運動に変換するのが困難。位置平衡制御のため、慣性モーメントや外力を受けた時、過負荷によって減速機が破損する可能性がある。そのためトルク検出やその制御が必要。電気モーターは銅線と鉄なので多用すると全体の重量が大きくなる。モーターごとに専用の駆動回路が必要。過負荷対策や放熱対策なども必要。
② 油圧制御
○ 利点-アクチュエータ単位体積当たり非常に大きなパワーが出せる。空圧に比較すると制御しやすい。
● 欠点-油圧発生源を搭載する必要がある。そのため大きなスペースと強力な電源またはエンジンを必要とする。オイル回収経路が必要。油圧サーボ弁ごとに、専用の駆動回路が必要。油圧サーボ弁の製作には、高度な部品加工技術が要求される。
③ 空圧制御
○ 利点-アクチュエーター単位体積当たりのパワーをかなり大きくできる。力平衡式の位置制御になるため、慣性モーメントや外力を受けた時、過負荷で破損することが少なく、柔軟に対応することができる。消費した空気の回収経路が不要。機器の小型化が容易。空気源と電源を最小にできる。
● 欠点-回転機構と制御が難しい。特に慣性系を制御するためには特別な工夫が必要。また空圧サーボ弁で人型ロボットに応用できそうなものが製品として存在していない。それゆえ工学の分野において、空圧制御をロボットに応用しようとする研究者は極めて少ない。
現時点のサーボモーター技術または油圧技術を用いて、ほぼ人間と同様な作業をさせ、パワーを併せ持つ多関節ロボットを設計するのは、非常に難しい課題です。現在発表されている様々なロボットにおいて、腕と足の動きはかなり高いレベルに達していると思われますが、手に関しては残念ながら大きな困難に直面している言わざるを得ません。
しかしながら手の働きが最も重要であり、もし人間に近い手を作ることができれば、人型ロボットは非常に大きな発展をすることでしょう。
当社開発の超小型・空圧デジタルサーボ弁が人型災害ロボット実現に向けて突破口を拓いたと考えています。これを実証するために、いくつかの動画を公開します。
特に、手の働きに御注目ください。手の部分に9個のエアシリンダー、9個の位置センサー、4個の感覚センサーを埋め込み、指を駆動するための10個のサーボ弁を腕に搭載しています。
◆ 当社開発の空圧デジタルサーボ弁の特徴 特許登録
1.シーケンサー出力で直接駆動できる。
2.空圧CYLの前進後退、位置決め、速度制御が可能。
3.超小型形状。
006 5Kgダンベル 2021.03.02
人間並みの握力と指の力があり、自由度もかなり人間に近くなっています。他の動画006~014も併せて参照してください。
007 ハンマー 2021.03.02
008 スパナ 2021.03.02
従来の技術では、この狭いスペースの中に、人間並みのパワーを持った多くの関節を埋め込むことができません。当社は、関節を空気圧を用いて駆動する新たな制御技術を開発しました。006~014の動画はこれを実証するためのものです。特に手と指の動き方に御注目ください。
009 卵 2021.03.02
010 12φ丸棒 2021.03.02
011 サラダトング + M6ナット 2021.03.02
012 ドアノブ 2021.03.02
◆ ドアノブを握り、回し、戻し、離脱する。
災害ロボットは建屋の中に入ったり出たりしなくてはならないはずですから、このパフォーマンスは必須条件です。しかし、意外と難しいと感じたのは、ノブが大変滑りやすいことです。このため、指の表面の材質、粗さ、まといつくような柔らかさなどが必要であると思います。
013 指の力(第一関節) 2021.03.02
◆ 10Kgの重りを、中指の第一関節に乗せて、持ち上げます。
第一関節と第二関節は独自に動かせる事が指の柔軟性にとって重要な事です。第三関節は第二関節に連動して動きます。
指の柔軟性だけでなく指の力が極めて大事です。これは、握力のもとになる指の力を証明するためのパフォーマンスであり、空気圧が0.6MPaの時の実験ですから、圧力が上がれば、更に指の力は増大します。第一関節を伸ばしたまま、第二関節を90度まげて重りをひっかけた場合、やはり10Kgの重りを下げられます。
014 ダンベル26Kg 2021.03.02
◆ 握力の証明として、ダンベル26Kgをつかんで持ち上げています。
001 ロボットアームの基礎研究 2018 11 19
002 ロボットアームの動作能力-無負荷
2018 11 21
003 ロボットアーム 2 5kg負荷と追従制御 2018 11 22