エアリークテスターの技術資料2

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エアリークテスター・技術資料

◆ 技術資料 P.2        
 
1.概要 2.エアリークテスタとは何か ① エアリークテスタとは何か ② 充填する検査圧力と必要な分解能 ③ 検出器の【硬さ】  ④ 温度と圧力の関係 ⑤ 差圧を測定しマスターと比較する理由   ⑥ 天気と測定値/気温の変化、外気(室外)風速、ドアの開閉、部屋の風等  ⑦ 取り扱いは手袋を着用

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1.概 要
 
 エアリークテスタはガス検と較すると、安価にかつ簡便に測定装置を実現することができるため、非常に多くの分野で用いられています。しかし、簡単に表現すると、エアリークテスタは難しい、という率直な感想をお持ちの管理責任者、または導入責任者が多いのではないかと思います。これはメーカとして数十年の経験から言えることです。そこで、当社のエアリークテスタ  Hyper2000 をベースにして、出来るだけわかりやすく解説し、技術資料としてまとめました。
 
 リークテスタとしては、本来、リーク〔ゼロ/有り〕を確実に検査したいところです。電気的な感度・分可能を上げればそれが可能かというと、そうではなく、実際は様々な要因があり、自ずと限界があります。その限界がどの辺にあり、また何故か、ということをよく知ることが、検査システムの構築、装置の開発おいて、良い結果を生むと考えます。
 
 そして、ガス検を選択するかエアリークテスタを選択するか。あるいはエアリークテスタにおいても、どのような検査方式を選択すればよいか。また実際は防滴仕様、防水仕様、油圧仕様などの部品を、エアを用いて検査しNG/OKの判定をする、その根拠は何か、空気と油とどのような相関関係があるのか、このような問題について一つの考え方を示し、導入責任者の悩みを少しでも軽減できれば幸いです。


 
2.エアリークテスタとは何か
 
 ① エアリークテスタとは何か
 
 洩れがあってはならない、あるいは一定以下の洩れでなくてはならない機器・部品は意外と多く、機械部品だけに止まらず、様々な容器・ケース、あるいは包装用の袋に至るまで実に様々です。
 
 家庭用のガス器具などは絶対にリークがあってはならない機器・部品に属すると考えられ、厳密な検査を義務づけられたこのような機器に対しては、一般にガス検と呼ばれている方法が採用されています。測定ワークをカプセル内に入れ、ワーク内にヘリュームガスなどの検査ガスを充填しておき、カプセル内を真空ポンプで引きつつ、その管路の途中にガスを検知するためのセンサーを設置して、リークの有無を検査する等の方法です。
 
 しかしながら感度が高い反面、検査ガスの費用、周辺にガスが残ると誤動作する等からくる装置としての難しさ、また検査時間が長い等、様々な制約があります。
 
 一般にはある一定のリーク範囲内であれば実質的にOKという機器も数多くあります。このような場合に多く使用されているのがエアリークテスタであり、前述のガス器具においても、部品段階、組み立てる工程においてはエアリークテスタを用い、最終検査でガス検査機器を用いているケースが多いようです。
 
 エアリークテスタを簡単に言えば、空気を検査ワークの内部に充填、その圧力変化から、リーク量を知る検査方法です。これを一般に内圧測定型エアリークテスタと呼んでいます。後述しますが、これに対して外圧測定型(カプセル式)エアリークテスタ、部分リーク測定型エアリークテスタ、その他様々な測定方式が実際には用いられており、検査ワークの特徴に合わせて選択します。
 
 空気の諸特性について余り詳しくない方は、リークがなければ、本来、圧力変化はないはず、と考えがちです。ところが、空気の圧力というのは、実に様々な影響を受け、非常に不安定であるのが実態であり、その不安定な空気圧を媒体として検査を行う以上、測定上に限界があります。従って、より安定した測定を実現するための様々なノウハウ、また注意しなくてはならない事項が幾つかあります。空気圧に大きな影響を与えるのは特に「温度」であり、以下において具体的に説明します。
 
 
 ② 充填する検査圧力と必要な分解能
 
 エアリークテスタにおいて技術的に難しい問題の一つは、検査圧力に対して、検出したい圧力が余りにも小さい、つまり高い分解能が必要だという点です。通常の検査圧力としては、0.2~0.3 [MPa] が多いのですが、中には数 [MPa] という場合もあります。
 
 しかし、エアリークテスタとして必要な分解能は1 [Pa] の単位が要求されます。簡単に言えば、分解能は検査圧力の 10の6乗分の1 (1/1,000,000)、すなわち百万分の1という事になります。
 
 つまり、検出器に要求される耐圧に対して、必要な分解能は百万分の一という事になります。通常の検出器・センサーの仕様を調べて頂くとよく分かりますが、そういう市販の検出器・センサーはありません。せいぜい分解能はフルスケールの1/1,000 ぐらいであり、さらに高い分解能が必要な場合は、フルスケールの範囲を狭めて機種を選択するのが通常の使い方です。
 
 何故かというと、通常のセンサーは公称耐圧の7割程度をフルスケールとし、その全範囲を精度良く検出できるように設計されており、零付近だけ電気的に拡大していっても、ノイズの成分が次第に大きくなり、結局百万分の一を検出することはできないのです。
 
 従って、耐圧が 1 [MPa] 以上あり、零付近だけ百万倍に拡大して見ることができる、特殊な検出器・センサーをエアリークテスタは搭載しています。当社の検出器・センサーも当社で開発した独自のものであり、原則として市販は致しません。
 
 
 ③ 検出器の【硬さ】
 
 検出器の【硬さ】と表現したのは以下に示す理由からです。分解能を [Pa] 単位として、1 [Pa] を検出するために変化した検出器内の体積を Δν としたとき、Δν が大きいと感度に大きな影響を与えます。従って、Δν が小さい検出器を【硬い】と表現しました。「5.体積と感度の関係 ② 差圧検出器の検出変位が感度に及ぼす影響」で詳述しますが、【軟らかい】検出器、つまり Δν が大きいと、エアリークテスタとしての感度が著しく低下します。
 
 通常の圧力測定では、検出器内の体積が変化しても、測定したい圧力に何も影響を与えません。しかし、エアリークテスタの場合は、測定したい圧力そのものに影響を与えてしまいます。つまり、感度を高くしようとして検出ダイアフラムの変位を大きくなるように設計すると、検出器としての分解能・感度は高くなりますが、エアリークテスタとしては逆に感度が落ちるという矛盾が生じます。非常に小さなリーク量・体積を検出しようとしててますので、検出器がその体積に対して無視できない程度に体積変化をすると、大きな影響を与えてしまいます。
 
 従って、耐圧があり、零付近の分解能が非常に高く、かつ【硬い】検出器が必要だということになります。事項で示しますが、温度に対する高い安定性も、極めて重要な性能です。
 
 
 ④ 温度と圧力の関係
 
 測定器本体、接続管路、治具、周囲の空気、検出ワーク等の温度が均一で安定している事が、高い精度と安定した測定結果を得るために不可欠な条件です。
 
      P : 内部圧力(絶対圧力)   [Pa]
      V : 体積             
      G : 体積内の空気の重量   [N]
      R : 空気のガス定数    29.3[㎏・m/㎏・K]
      T : 絶対温度           [K]
 
 とすると、空気のような理想気体・完全ガスと言われる気体においては、
 
      PV = GRT ----------------------------------------- (1)
 
という関係があり、これを熱力学の状態方程式と言います。
 
 すなわち、この状態方程式から分かるように、内部の空気の温度が変化したり、環境としての温度変化が配管、治具、検出器、検査ワークなどの体積を微妙に変化させると、それが大きく影響します。
 
 ここで、内部圧力 P は充填する検査圧力であり、その百万分の一を感度とすれば、温度 T [K] の百万分の一の変化が、測定値に影響することが理解できると思います。
 
 すなわち、常温 20 [℃] を絶対温度で表せば、293 [K] ですから、その百万分の一は 2.93×10のマイナス4乗 [℃] になり、0.000293 [℃] の温度変化は、エアリークテスタに必要な分解能と等しいレベルにあると言えます。
 
 
 ⑤ 差圧を測定しマスターと比較する理由
 
 ここに、エアリークテスタの多くが差圧検出器を搭載しており、マスターと検査ワークを比較して、その差圧を検出する方式を採用している理由があります。
 
 一般に、測定器本体、配管、検査ワーク、マスター等の温度が等しくかつ安定しているというのは、百万分の一のレベルで見たとき、あり得ないだろうと容易に想像できます。実際は、室温の変化に従い、それぞれが異なる速度で温度変化を続けています。また。充填圧力・検査圧力は減圧弁を通過して圧力変化をしますから、当然、温度も激しく変化します。
 
 細いオリフィスを高速で空気が通過すると断熱変化という状態変化を起こし、温度は急速に下がります。通常はポリとロープ変化と呼ばれ、断熱変化と等温変化の中間の状態変化をすることが多いのですが、エアリークテスタにおいては、空気を等温変化と呼ばれる状態変化として取り扱えるよう、充填時間を長く取り、充分な安定時間を設けて、その後に検査時間を取るように工夫しています。
 
 更に、マスター側と検査ワーク側の管路の全てを対象な関係に配置し、差圧を測定することで熱バランスを取るようにします。マスター側と検査ワーク側の圧力が刻々と変化しても、二つが等しく変化するならば、その間に差圧は発生しません。差圧検出器の形状も左右対象にすることが重要です。
 
 しかし、完全に対象にするのは厳密に言うと困難であり、どうしても微妙な差が出ます。また、検査ワークとマスターも同じ形状ではありません。そこで、マスターとなる体積を可変にし、洩れのない検査ワークで、差圧が発生しないように、マスターとなる体積を調整する方法を取ります。この時、体積の比較では検査ワークとマスターとは異なるかもしれませんが、熱的バランスを取りさえすれば、より正確なリーク検査が行えることになります。  
 
 
 ⑥ 天気と測定値
        気温の変化、外気(室外)の風速、ドアの開閉、部屋の風等
 
 天気を持ち出したのは、実際にあり得るからです。今までの経験から言うと、曇り空の時が一番安定した測定結果が得られます。それは、刻々と室温が変化する状態にあると、リークテスタを構成する全ての部品・検出器・配管・検査ワーク等も同様に温度変化を続けています。そして各要素には熱容量に差があるため、それぞれの温度変化の仕方は異なります。ですから、同じ検査ワークに対しても、測定結果の繰り返し誤差が大きく、また次第に拡大するという結果になりがちです。理想的には、温度管理された室内での計測、検査ワークも室温で保管した後、計測するのが望ましい結果が得られると思います。
 
 外気(室外)の風速も実際に影響する事があります。これは、特に直圧式のリークテスタの場合に言えることです。風速というのは一定ではなく、強く吹いたり、弱くなったり、方向を変えます。また測定室のドアの開閉も問題です。そういう現象があると室内の気圧が微妙に変化します。直圧センサを用いて計測中に気圧が変化すると、計測値に気圧の変化分がそのまま影響します。差圧式検出器で差圧を測定している限りは、外気の風の影響を受けることはありません。しかし、検査ワークが包装容器のような場合は、あり得るかもしれません。
 
 部屋の風については要注意です。それは、測定器、検査ワーク、マスター、管路に風が当たると、均一に風が作用しない可能性が高く、微妙に熱バランスを攪乱する要因となり得ます。 
 
 
 ⑦ 取り扱いは手袋を着用
 
 以上のように、温度と熱については慎重に配慮する必要があります。ですから、検査ワークを素手で持ったりすると、ワークが暖まりますので、やはり熱バランスのかく乱要因となります。手袋をして、治具との脱着、取り扱うことが望ましいと思います。