7.エアリーク検査による
NG/OKの設定値と判定の根拠---参考
(自動車用の油圧部品に関する考察)
① 考察の目的
ダイキャスト等の鋳物は鬆(す)が原因で不良部品となるケースがあるために、エアリークテスターを用いて構成部品を単体で検査する事が多い。しかし、エアリークテスト結果を判定するためのOK-NG限界値設定が、製品として実際に使用した場合を考えた時、果たして適切なのかどうか、その根拠は何か、という疑問が生じる。
そこで、当社はエアリーク検査と実際の油洩れとの相関を知る一助として、以下の考察を行なった。
(注) 本考察計算はあくまでモデルである
② 仮定と計算方法
2-1 鬆を管路とみて、空気と油の流量を計算する。
2-2 鬆による管路径は微少と思われるので、レイノルズ数はかなり低いと考え、層流 状態と仮定する。
2-3 管路における鬆の実際はかなり複雑な形状をしていると思われるが、これを等価 的に円形断面、かつ軸方向に対して一様な直径を持つ滑らかな直管と考える。
2-4 エアリーク計算(測定値[Pa]と洩れ量[m3], or [cc])においては、空気を理想気体 と仮定する。
2-5 微少管路においても、ハーゲンポアズイユの法則が成立するものとする。
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③ 管路の流体摩擦損失
3-1 管路形状と等価管路
図010 実際の鬆(す) 図011等価管路
実際の鬆は非常に複雑な断面形状をしているが、これを等価的な流体摩擦損失としてとらえ、円形断面(φd)、管路長のモデルを考える。油と空気の場合、一方は非圧縮性流体、一方は圧縮性流体であるので注意を要する。
3-2 摩擦損失の理論式(理論式の導入過程は省略する)
(a) 圧縮性流体の場合
管路を圧縮性流体が流れる場合、一般に摩擦損失をともなう。定常流れに対する圧力損失は、
| └- 摩擦損失-┘ |
└-慣性項-┘ |
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-----------(28) |
仮定 1.円形一様な断面を有する管路
2.等温変化をするものとする。
P1 :入口の絶対圧力 μ:粘性係数
P2 :出口の絶対圧力 ρ0:標準状態の密度
P0 :標準状態圧力(大気圧)
Q0 :標準状態流量
慣性項は流速の遅い範囲(層流領域)内では無視できる。従って、圧縮性流体の層流領域における定常流れの場合、その圧力損失は、(28)式より、
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------------(29) |
このときのレイノルズ数は
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-----------------------------(30) |
Umd : 管路の中の平均流速(標準状態における)
A : 管路面積
(b)非圧縮性流体の場合
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-----------(31) |
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-----------(32) |
Ud : 管路内の流速
(31)式はハーゲンポアズイユの法則である。
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④ 油圧に換算したリーク量計算と類推
図011に示す管路に、圧縮性流体と非圧縮流体を、それぞれ流した場合の流量Q0を求める。
4-1 圧縮性流体の場合
(29)式より、ΔP = P1 -P2であるので、
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---------(33) |
4-2 非圧縮性流体の場合
(31)式より、
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---------(34) |
4-3 空気と油の比
圧縮性流体を空気とし、非圧縮性流体を油とすると、
 |
-----------(35) |
| 記号 |
名 称 |
適用数値・単位 |
| Pair |
リークテスト時の検査圧力 |
[Pa] |
| P0 |
大気圧 |
1.013×105 [Pa] |
| Poil |
油圧の時の実際の内圧 |
[Pa] |
| μoil |
使用油の絶対粘性係数 |
0.176 [kgf・s/m2]=1.726 [Pa・s](90℃) |
| µ air |
空気の絶対粘性係数 |
1.858×10-6[kgf・s/m2]=1.822×10-5[Pa・s] |
| Qair |
リークテスト洩れ流量 |
[m3/sec] |
| Q oil |
実際の場合の洩れ流量 |
[m3/sec] |
4-4 リークテスト流量Qairを仮定した場合の管路径を計算
:(Φ2の泡一個)/secに相当する |
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| と仮定すると、(33)式より、管路径 Φd は、 |
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すなわち、内圧 0.1961 [Mpa] (2[kgf/cm2])、1秒間に 0.005cc のリーク流量、長さ 5 [mm] の管路を想定したとき、その管路径は 14.8 [µ] として計算できる。
4-5 前記管路を油が流れたときの流量を計算
長さ L=5 [mm]、管路径 d=14.8 [µ] の管路に、油が流れた場合の油の流量は、
Poil -P0 = 90 [Kgf/cm2] 最大負荷 = 8.83×106 [Pa]
= 2 [Kgf/cm2] 無負荷 = 1.96 ×105 [Pa]
とすると(35)式より、
 |
----------------------------(36) |
であるから、
4-6 次に 1 [cc] 洩れるに要する時間を計算
すなわち、L=5 [mm]、Φd=14.8 [µ] の管路に最大負荷、無負荷で油が流れたとして、1cc の洩れに要した時間は、9.5日<T<432日、最大負荷時と無負荷時の比を 1 : 9 に仮定するとT ≒400 日となる。これは 24 時間連続走行したとしての時間ですから、実際はもっと時間が掛かるということになります。
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⑤ リークテスタにおける検出圧力とNG/OKの設定値
今までの計算において
Qair = 0.005 [cc/sec] :(Φ2の泡一個)/sec に相当する
これは、検査圧力になります。
を仮定してきたので、この条件でエアリーク検査をしたときの、検出できる差圧は幾らになるかを計算してみよう。(27)式に各値を代入すればよい。いずれも検出時間を 5 [sec] として計算した。
充分に検出可能な値が得られたと言えます。
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⑥ 考察
6-1 モデルと実際の違い
| (a) 管路断面が複雑で一様でない |
| (b) 運転していくに従い、油中に粒子が発生し、リークする管路に目ヅマリを発生すると考えられる。 |
| (c) 運転中の油の温度、負荷、粘度は一様ではない。 |
6-2 類推
| (a) 管路断面の周囲の長さを、面積をSとすると同じ断面積Sであってもの長い方が、管路抵抗が大きい。また、曲がりくねったり、断面積が急激に変化する方が大きい。 |
| (b) 微少領域内でも運動方程式、ハーゲンポアズイユの式が成立すると仮定すれば、等価管路は充分な意味を持つ。 |
| (c) 14.8[µ]程度の管路径ならば、5 [µ] のフィルターを通過した粒子でさえ、堆積、目ヅマリする可能性がある。 |
(d) 1 [cc] の油のリークに 400 日を要すということを実際の運転にあてはめれば、1日平均 10 [h] 運転したとして、2.4 年、平均時速
30 [km/h] として、26万 [km] の走行距離となる。
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(e) この時のリーク検査の検出できる値は、検査圧力 02 [Mpa]、検出時間 5 [sec]、検査ワーク体積 100 [cc] の時
2 5[Pa]、30 [cc] とすると 77 [Pa] という数値であった。
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(f) 仮に 10万 [km] 走行で 1 [cc] のオイル洩れを許容したとすると、検出圧力はそれぞれ 2.6 倍になります。
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6-3 結論
| (a) 以上の計算と類推は自動車用のギアポンプを想定したものですが、エアリーク テスタのNG/OKの判定値を決定するための根拠、考え方を提示できたと思います。 |
| (b) 油の粘度により、計算値は変わります。 |
| (c) 油以外の流体にも同じ考え方が適用できると考えます。 |
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8.その他
① 検査圧力と測定の安定性
測定圧が 0.3 [Mpa] ~ -0.1 [Mpa] の範囲における検出圧力値のバラ付巾は、比較的少ない事が経験的に知られています。製品の仕様として、高い圧力で検査する必要がある場合を除いて、できるだけこの範囲の検査圧力で検査する方が、安定した結果が得られます。
② 検査ワーク体積と充填時間
検査ワーク体積と配管を含めた外部体積を 200、500、1000 [㏄] とし、圧力ゼロから加圧を開始し、外部体積内の圧力が P-0.01
[kg/cm2]に達するまでの時間を測定したところ、
200 [cc] の時、約2.5 [sec]
500 [cc] の時、約4.5 [sec]
1000 [cc] の時、約7.0 [sec]
という結果となりました。この時の配管径は 2/4φ、長さ100 [㎝] で行いました。
但し、エアリークテストとして行う場合は、この 2 ~ 3 倍以上の時間を取った方が良いと思われます。バランスを充分に取ることが、まず何より測定に於いては大事と思って下さい。真空式の場合は、真空ポンプの容量やサージタンク・配管にも関係し、加圧式よりも時間を掛ける必要が有ります。但し、極めて安定が良いので平衡時間は殆ど必要有りません。
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③ 正圧式と負圧式の比較
3-1 正圧式の長所と短所
正圧式は通常のリークテスタとして使用されています。これは検査ワークが加圧された状態で使用することが多い為であり、出来るだけ実際の使用に近い状態でテストするのがベターであるからです。加圧力が実際の使用に近いという事は、加圧による洩れの発生、部品の変形、シールの変形等も合わせてチェックできることになります。
しかし、測定圧が高くなると熱的なバランスを取るのが次第に困難となり、加圧時間、平衡時間を長く取る必要が出てきます。そして必ずしも測定精度が良くなるとは言えません。
3-2 真空式の長所と短所
真空式の最大の長所は熱的影響を極めて受けにくい事です。つまりワークや配管が仮に大気温度よりもかなり高い場合でも、測定が可能です。
また、開口部が大きい検査ワークをシールする際、正圧の場合、シール力・クランプ力として数百 [kgf] から 1 [t] の力を要することは珍しくありません。このような場合、真空式を採用すると自力でシールするため、クランプ力を非常に弱くすることができ、また筐体の強度も必要せん。
短所としては、感度が低いことです。ここで、リーク流量と検出差圧の関係は検査圧力に殆ど影響を受けません。真空式でも、加圧式でも(27)式を参照すると、
 |
------------------------------------(27) |
という関係があります。検査圧力に関係する項 Pks(k+1) は V1 に比較して、無視はできないが、かなり小さい数字ですから、リーク流量 Qt が同じならば、検出される差圧 ΔP はほぼ同じ値になることが分かります。それなのに、なぜ感度が低くなるかというと、(33)式において、
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--------(33) |
P0 = P2 ≒ 0.1 [Mpa 大気圧であり、正圧式の場合 P1 = 0.1 [Mpa] (ゲージ圧) = 0.2 [Mpa] (絶対圧)、真空式の場合 P1 = -0.1 [Mpa] (ゲージ圧) = 0 [Mpa] (絶対圧)ですから、絶対圧で(33)式に代入して比較すると、
Q負圧 がマイナスになるのはリーク方向が反対であるためであり、従って、
となり、同じ差圧、同じ穴からリークした場合、すなわち正圧から大気圧へリーク、大気圧から真空へリークした時の、大気圧換算のリーク量を比較したとき、真空方式は約
1/3 になります。リーク量が 1/3 になるため、(27)式から検出される差圧も約 1/3 となります。結論として、感度は 1/3 になると言えます。
以上、技術資料 完
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